熱情劇場

日本語めちゃくちゃ断末魔

拝啓 伊月俊様

 

秋晴れの陽気が心地良い時期となりました。いかがお過ごしでしょうか。もう目前まで迫っているWCに向けて、大切で頼れる仲間たちと共にバスケットボールにますます打ち込んでいる頃でしょうか。
さて、こうして今年であなたのお誕生日をお祝いするのも今年で10回目となりました。そこで一つの節目として、こうしてお手紙を書くことにしました。

はじめにお祝いした年から年月を重ねた分だけ、私をとりまく状況も身を置く環境も目まぐるしく変わり続けています。そんな中でも毎年この10月23日はコーヒーゼリーを味わいながらあなたのことを想うひと時を過ごせていることを、心から嬉しく思っています。

この10年間、伊月くんは変わらず強くて美しいままですね。原作、アニメ、ドラマCD、舞台…など、いろんな世界のあなたを見せてもらいましたが、そのたびに好きだという気持ちが強くなるばかりです。そしてこれからも多分、命が尽きて私が私でなくなるその瞬間まであなたのことが好きだと思います。

                                                              

あなたの名前が好きです。

伊月俊。「月」というあなたを象徴する字の入ったどことなく和な雰囲気のある苗字に、優れている、冷静かつ機敏な判断力という意味が込められたファーストネーム。漢字にするとより美しくて、あなたにぴったりな素敵な名前だなあとずっと思っています。何度も呼びたくなってしまいます。伊月くん。

 

あなたの容姿が好きです。
ミーハーだと思われてしまうでしょうが、出会った時から今まで綺麗だと思い続けています。お母様によく似たどの媒体でも艶のある黒髪に、スッと通った切れ長の深くて黒い瞳。趣味を知らないくらい接点のない異性にだってモテてしまうのも納得がいきます。いつもは美しいのに、場面によっては可愛らしく丸みを帯びたタッチで描かれるところもたまらなく好きです。女性的な見た目ではなく、バスケットボールに打ち込んでいる少年らしく筋肉もあってたくましくてしなやかな美しさをもつあなたに、昔も今も夢中です。

 

あなたのまっすぐに趣味を愛する心が好きです。
ダジャレという一見単純な言葉遊びを、知的な上級コミュニケーションとしてとらえているところ。周囲にどれだけ否定されようとも、100冊以上のメモ帳に書き続けてめげずに磨いているところ。正直なところレベルは高いとは言い難いのかもしれませんが、それでもダジャレを愛し、思いつくたびに目を輝かせて披露する姿には愛しさを感じると同時に、あなたの頑固で真っ直ぐな一面を感じられて大好きです。

 

あなたの冷静で穏やかなところが好きです。

まだ若く、少人数ながらも実力者揃いで大人の管理者が不在という誠凛高校バスケットボール部。そんなメンバー達を副主将として、そして司令塔として上手く支えているあなたの人柄は、とても17歳とは思えません。とうの昔に成人した私ですが、未だに伊月くんに人間性で勝てるところが一つも見当たらないです。バスケを愛するあまり時に感情的になってしまう主将をはじめ、まだまだ発展途上の同級生や後輩たちが冷静な視点をもってして穏やかに接してくれるあなたの存在に安心感を覚えた場面は沢山あると思います。伊月くんが誠凛バスケ部というチームに居てくれて本当によかったです。

 

あなたの頑固でストイックなところが好きです。

相手チームからナメられている、と指摘されたときに「わかってる」と答えたり、インタビューで「自分より上手い選手はいっぱいいて、それを自覚しちゃってる部分はある」と言ったりするあなたを見ていると、現状に満足せず常に高見を目指しているのが分かります。そんなストイックなところが大好きであると同時に、もどかしくも思っています。だって、自分の弱さを認められる時点で十分に強い証拠だと私は思うから。もっと自信を持ってほしいし、うぬぼれてほしい。…けれどもあなたは「まだまだ勝ちたい」と走り続けるのでしょうね。「練習の時間が減るから」と恋愛沙汰にうつつを抜かすことなく、残りの高校生活もすべてバスケットボールと仲間たちに捧げるのでしょうね。そんな不器用なくらい頑固なところもやっぱりもどかしいけど、大好きです。

 

あなたの前向きでちょっぴりエゴイストなところが好きです。

「日向と一緒にバスケがしたかったから」誠凛高校に進学したことが数年前に明らかにされました。私はこの真実を知ったとき、生きているうちに知ることができた喜びを強く感じたと同時に、あなたに対して幾つか誤解をしていた(というか理解できていなかった)ことに心の隅でショックを受けていました。自分の実力不足を感じているものの、それに屈することなく真っ直ぐ自分の道を進み続け、その中で出会えた「一緒にバスケがしたい」と思った仲間がバスケを諦めようとしていても芯はそう思っていないことを見抜いてお構いなしに高校まで追いかける前向きさ。仲間を心配して、というよりは自分の大好きなバスケを大好きで大切な仲間と続けたい、というあなたの強い自我が生み出した選択なのだと気付いた時、とても嬉しかったです。それまではどちらかというと大切なものに対して理性的で自己犠牲的な面が強い人物であるという印象でしたが、ある意味覆されたのです。まだまだ私の知らない、もしくは気付いていない伊月くんの一面は沢山あることでしょう。生きていれば、宝石を集めるみたいにあなたのことを知っていけるのは人生の楽しみの一つです。ありがとう。

 

最後に、あなたのバスケが好きです。

黒子のバスケは、信じられないくらいの圧倒的才能を生々しく残酷に描いている物語です。その作品の中で、伊月くんのバスケの能力は決して高い方ではなく、平均的といったほうが適切であると思います。誠凛バスケ部の攻撃に欠かせない、イーグルアイによる高い空間把握能力と、それによる的確なパス回しやスティール。一見すると特殊能力ですが、すべて伊月くん自身による気が遠くなるくらいのトライ&エラーの繰り返しによる結晶でしょう。

「オレは不器用だから一つ技を覚えるにも人の何倍も練習しなければならない。だったらできるまで何倍でもやるしかないだろ…!!」

今でも何かの試験や大事な仕事に臨む時に必ず読み返しているあなたの言葉です。すべての人がそうではありませんが、何か失敗したときや成し遂げられなかったとき、人はつい実力不足ではなくて準備不足のせいにしたくなります。自分が劣っていると自分で認めるのが怖いからです。だけど、あなたはその若さでそれが自然にできている。そして、それでいてなお腐らずに前を向いて努力し続けている。大好きなところであり、尊敬すべきところだと思っています。

伊月くんがボールを回して流れるようにスコアラーたちにボールが渡り、ゴールに吸い込まれていく場面はいままで何度も見せてもらいました。この鮮やかな流れを創り出すまでに幾度の悔しい夜を過ごしたあなたのことを想うと、胸が熱くなります。
あなたのバスケは、常人ならとっくに自己嫌悪で投げ出しているほど気の遠くなる努力と、仲間への深い愛情でできているのだと思います。だからこそ、見ていて強い感動を与えられます。心から愛しています。

 

なんでずっとこんなに好きなんだろう、と思ってあなたの好きなところを書き出してみたら少し長くなってしまいました。

伊月俊という人物を構成するものが、人が、時間が、世界が、すべて心から大好きだと思えてしまうほどにはあなたのことを考えているはずなのに、未だに掴み切れていないのが悔しいです。そしてそれと同じくらい、やっぱりそんな掴み切れないところさえも好きだと思ってしまいます。多分、好きなところしかないのでしょう。

あなたがいなければ今の私は絶対にいませんでした。あなたがいなければ出会っていない人は沢山いて、手に入れられなかったものも数え切れないほどあります。すべては伊月くんの魅力と、その魅力に酔いながら歩いてきた道の生み出した愛しい結果です。

伊月くんが今日も私の人生にいてくれることがたまらなく嬉しいです。生まれてきてくれて本当にありがとうございます。大好きです。

 

敬具

 

2021年10月23日 梨々香