熱情劇場

日本語めちゃくちゃ断末魔

日吉若の女から見た 氷帝VS立海 Game of Futureの殴り書き感想

ついにこの日がやってきた。

発表された去年の5月から、楽しみである半面怖くて仕方なかった。氷帝学園のファンとして、日吉若の女として、ただ怖くて、だけども待ち望んでいた。
朝から、轟レイさんによるOP主題歌である「1/2の未来」をずっと聴いていた。
勝つか負けるか、1/2の未来。だとするならば、その勝ちは氷帝学園が進んでほしい。決して譲れない道の先をただ真っ直ぐに見つめてる、日吉若。日吉くんにとっての譲れない道ってなんだろう。下剋上氷帝学園の勝利?全国大会、U-17合宿、観客席から見ていたW杯。それらを経た上で部長を任された日吉くんの目の前には、どんな景色が広がっているのだろう。
自分の緊張と不安と楽しみが全て歌詞とリンクしていて、爆発しそうだった。
舞台挨拶は、MCの成くんと諏訪部氏、さちん、川口監督が登壇された。配信開始前の挨拶であったので話せないことが多いらしく困っている様子が申し訳ないけど面白かった。正直このあと見る本編に気を取られすぎて細かくは覚えていないが、とりあえずブン太のガムの透明度は忘れずチェックしようと思った。
いよいよ始まる本編。
跡部様の入浴シーン(薔薇)から始まるところは流石だと思ったし、笑ってしまったが次のシーンに移り変わった途端に泣くことになった。
日吉くんが、部長になっている。
日吉若という存在を知り、好きになった時からわかっていた未来。初登場の時から次期部長候補として世界に存在していたのだから、当たり前の事実。のはずなのに、実際に目の前で魅せられると涙が止まらなかった。
鳳と樺地と3人で話し合いながらメニューを作っているシーンを見るだけでもわかってしまう。もう、関東大会の頃の日吉若はいない。
チームメイトの樺地のことをバケモン呼ばわりし、跡部景吾が好敵手である手塚国光と凄まじい戦いの末勝利した直後であろうと自分の勝利を当然のものとして構え、それどころかS1の座着くことだけを考えて目の前の対戦相手である越前のことすら見ていなかった控え選手。常に前向きで虎視眈々と跡部景吾の背中だけを狙っていた2年生。もう、あの日吉くんはいないのだ。
だけれども、決して「下剋上」を忘れたわけでも諦めたわけでも無い。ただその対象も共に目指す仲間も増えて範囲が大きく拡がった。そして、その分かける想いも強くなった。
立海への下剋上という言葉を跡部景吾から投げかけられた時にハッとした顔で素直にコートに走り、ラケットを握りながら立海跡部景吾への下剋上を誓う日吉くんの姿が眩しかった。
試合を見ている時も跡部景吾の隣で冷静に試合展開を分析する日吉若。ガムシャラに走るだけでなく、「勝利」を確実に獲る現実と捉えてその王座に座っている。
その成長というか時間の流れがいとしくて温かくて、だけどちょっぴり寂しくて泣いてしまっていたのだと思う。日吉くんが大人に近付いているという当たり前の事実が胸に刺さった。
勝ってほしい。お願いだから。勝ち負けがすべてではないけど、それでも彼の勝利した姿が見たい。日吉くんに、勝って欲しい。お願いだから。

D2 忍足向日VS丸井玉川
このダブルスオーダーを見た時も涙が溢れた。だって、ずっと見たかった。
忍足侑士と向日岳人のダブルスが好きだった。
小学生時代転校を繰り返していて、関西で孤高の天才だったシングルスプレイヤー侑士が、何故パッと見何もかも真逆に見える向日さんとダブルスを組んでいるのか。
これは私の勝手な考察だけど、侑士は向日さんの魅せるプレイにこだわる、勝ちだけでなく勝ち方にこだわるその「美学」に惚れているのだと思う。
平たく言えば、多分向日さんとのダブルスが好きなのだ。向日さんも同じで、2人とも2人のテニスを楽しんでいる。
作中でも数えるくらいしかいない互いを「侑士」「岳人」と下の名前で呼び合う二人。納豆が好きな向日さんと納豆が嫌いな侑士。もしテニスが無ければ話すこともなかったかもしれない2人が、同じテニスコートで楽しそうに戦う。
出会いが給水塔の上という少女漫画のような2人がついに映像化された時は目頭を覆った。関西から来たやや無愛想な新入生に明るく、でも自分の決意を持って話す向日さん。向日さんはあの出会った日から変わらずに跳ぶ。
ダブルスコンビであると同時にタイプが違う「友達」であることがわかるのが好きなところ。色々なダブルスの形があってそれぞれに違った魅力があるけど、私はこの2人の形がいっとう好きだ。
だからこそ、関東大会の試合を原作でもアニメでもミュージカルでも見てきて毎度思っていたのは「そんな」という気持ちだった。確かに2人に相手が黄金ペアでないという驕りは十二分にあった。だけど、負けてしまうなんて。急造コンビに。
新テニでも正直2人のダブルスを見ることはもう難しいだろうと思っていた。
だから、本当に嬉しかった。向日さんが自分の美学を崩さず、侑士がそれを尊重して戦う2人の姿が見られて嬉しかった。そして、勝った。場所が映画館でなければ私も叫んでいた。
「飛ばせてもらっちまったな」「2人でとった勝利や」
ああ、なんて眩しいんだろう。
本当に嬉しいよ。おめでとう。
おおよそ同じ理由で丸井桑原のダブルスを見たいとも思っていたから、そこは少し残念だったけど玉川よしおくんのキャラがとても魅力的で見入ってしまった。今は決定的に足りない自信も、これからどんどん得ていくのだろうと思う。
先輩の背中を見せる丸井(よしおの名前は覚えてないけど)も、「最後の試合、ブン太と出たかった」と強い思いを示しながらも立海の未来を見据えているジャッカルも凄くかっこよかった。
いい試合だった。

D1 鳳樺地VS真田柳
オーダーを見た途端「アッ」と思った自分がいる。それは(負けるかも)という意味での「アッ」だ。
真田と柳。立海三強のうちの2人。化け物。
正直この2人をダブルスで使うのは意外だとも思ったけど、ダブルスを一勝は確実に獲るという意図なのだとしたら効果的だ。
実際、最初は一方的な展開だった。もはや人間技でない必殺技を次々と繰り出す立海ペアを前に鳳のサーブ以外は圧倒されていく2人。
鳳と樺地に共通しているのは、言わずもがな特定の先輩の存在。鳳の場合は精神的支柱が宍戸亮で、樺地の場合は主人である跡部景吾。その存在は強みであったが、もちろん同時に弱みでもある。彼らがいなくなる1年後、2人はどうなるのかという疑問が生まれてくる。
私個人は心配とまでは行かなくともやはり「一悶着はあるのかなあ」くらいには思っていた。
それはまったくの杞憂だった。
U-17合宿とW杯観戦を経た2人の精神が成長しないわけが無いのだ。
ただ、相手が相手なのでどこかで「負けてもともと」という気持ちがあったのは先輩に見破られていた。それを指摘されてからの2人の表情の変化に鳥肌が立った。
勝つのは氷帝。私たちのスローガン。
勝ちに行く2人にまた泣かされた。樺地が、真田と柳の超人技を次々とコピーしていく。かつて宍戸さんに支えられる場面が目立っていた鳳が、対戦相手を見つつ樺地を見ながら冷静にゲームメイクしている。強い。幸村くんに言わせるくらい。
そして、先ほどの自分を恥じた。
私は氷帝学園の勝利を信じきれていなかった。個々で見た時の立海選手とのパワーバランスの傾きをどこかで勝率と結びつけていた。2人が、命を賭すほどに勝ちに走っているのに。なんて愚かなんだろう。
ハンカチを握りしめて応援した。今度こそ、心から2人の勝利を信じた。
最後の一球が決まり立海ペアが勝った時、身体が冷えていくのを感じた。
普段あまり表情が変わらない樺地が悲しそうな顔をして、跡部さんから投げられたタオルの下で鼻をすする姿が痛かった。関東大会で涙を流していた鳳が真っ直ぐ宍戸さんを見据えて悔しさを露わにする姿が苦しかった。
勝ってほしかった。すごく凄く、自分の事のように悔しかった。
それでも「次は負けるな」と声をかけられて小さく返事をする樺地と、まだ満足出来なかったと唇を噛む鳳に、確かな未来を感じたのも確かだ。
真田も柳も、強かった。怖いくらい強い。そんな2人に本気で勝ちに行く鳳と樺地が、誰よりも怖いくらい強かった。
そんな2人が来年の氷帝学園にいてくれることが、日吉若を支える立場にいてくれることが、嬉しい。ありがとう。
いい試合だった。

D3 宍戸VS柳生
完全に予想外のオーダーだった。
これはGame of Future、つまり未来に向けての試合。つまり中学を卒業後もテニスを続けていく彼らの試合でもある。
跡部さんと日吉くんが決めたオーダー。勝利のためには宍戸鳳ペアは鉄板。確かに私はそう思っていたところはあるし、もちろん2人のダブルスがまた見たいとも思っていた。
氷帝学園は敗者切り捨て。その方針は途中から曖昧になっていたものの根本では生きているから、宍戸さんは関東大会で 橘さんに負けてからシングルスでの試合はしていない。
オーダーが発表されてから「必ず勝つ」と誓う宍戸さんを見て全身に力が入った。
相手が柳生。正直、まったく勝敗や展開の予想がつかなかった。
柳生もダブルスプレイヤーのイメージが強い。そして相方は旅に出ている。本当にどこいったんだ。
しかし、その相方から受けた影響は強い。ただでさえ滅茶苦茶なレーザービームはさらに滅茶苦茶な方向に進化していた。
もうお前がこぼしたボールを拾ってくれる奴はいねえぞ。
跡部景吾の言葉に思わず頷いた。
鳳と宍戸さんのコンビは、鳳が宍戸さんを真っ直ぐ尊敬しまた精神的支柱として寄りかかっていると見られやすいが、実際はそうではないと思う。
実際、一度「お前はもう終わってる」とはっきり言われた宍戸さんが正レギュラーとして復帰出来たのは鳳というパートナーが居たから。自分のことを信じてついてきてくれる後輩というのは自身を鼓舞し大きな力になっていた。宍戸さんの中でも鳳という存在はかなり重要な精神的支柱になっていた。そして本人にもその自覚はあった。
冒頭シーンで「俺たちにとっては最後の試合だからな」と言い放ちその言葉に反応する鳳のやりとりがあった。
さきほどのD1では、すっかり氷帝を背負う一員としての鳳長太郎の顔が見られた。では、残していく立場であると同時にそのパートナーを欠いて高校という新たな舞台での戦いを控える宍戸さんはどうなのだろう。氷帝最強ダブルスの答えが、ここにあった。
仁王雅治という最恐の詐欺師パートナーが戦う姿を元に進化した柳生と、鳳長太郎という力強く自分を支えてくれるパートナーに背中を見せる為に戦う宍戸さん。シングルスなのに、ダブルスっていいな、そう思わせる試合だった。
最後の決め球を叩き込み雄叫びを上げる宍戸さんと、同じくらい大きな声で叫ぶ鳳。沸き上がる氷帝ベンチ。ED曲がかかるタイミング。跡部景吾の歌い出し。
そのすべてが涙腺を刺激して大変なことになった。
嬉しい。凄い。
勝った。でも柳生の技滅茶苦茶強かった。
いい試合だった。

ED曲がかかったことで前篇はここまでだということがわきったら、全身の力が抜けた。
すごく疲れた。エンドロールを眺めながら勝った試合も負けた試合も、その選手たちの顔やセリフを思い出してまた涙が零れた。

多分。多分だけど、次は日吉くんの試合と跡部様の試合がある。わからないけど、おそらくそうだと思う。
そして、勝つか負けるかが決まる。というかもうアフレコが終わっているということはつまり決まっているので、それを知ることになる。

日吉くんはどんな試合を見せてくれるんだろう。どんな思いを今抱えているのだろう。
譲れない道は、なんだろう。
その答えを知るために、4月17日まで絶対に生きていきたい。