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黒子のバスケ作中登場人物の異性モテキャラベスト10を真面目に考えてみた

黒子のバスケには多数の個性豊かでとても魅力的なキャラクター達が登場する。

ストーリーは死ぬほど面白いし、絵も後半に向けてどんどん綺麗で見やすくなっていった。しかし、正直キャラクターがきっかけでハマったという方も多いのではないかと思う。私もどちらかと言えばそうだ。

作中人物たちと自分がおおよそ同年代の頃に黒子のバスケに出会い、バスケにまっすぐで熱い青春を送るキャラクターたちに胸をときめかせたものだ。試合描写が大半を占めている漫画であるため、コート上で戦う彼らの姿に加えてたまに挟まれる日常回や回想シーン、ほとんどバスケをすることはない小説版、さらにはファンブックのプロフィールなどで補い、ところかまわず妄想を繰り返していた。自分と憧れのあいつやあの先輩が主人公のラブソング…的な夢小説を夜な夜な読み漁り一人で布団の中で(キャー!!!)などと盛り上がっては寝不足のまま登校していた。実際登校した学校には彼らのようなバスケ部員は一人もおらず、ただひたすらにむさくるしい男子学生集団が放課後の体育館を占領しているのみだった。

黒子のバスケは主人公・黒子テツヤの高校生活の一部分を描いた物語だと作者である藤巻先生は単行本30巻のあとがきで語っている。私はこのあとがきが大好きだ。作中のキャラクターたちがあの世界で「生きている」ことを強く実感できるから。私たち読者は、大好きなバスケに真剣に向き合う彼らの、15~18歳という人生の中でも最も輝かしくてまぶしくて美しいと言って過言でない時期を全力で生きている姿を見ることができている。とても幸福なことだ。だがこれはあくまでも黒子テツヤから見た物語。世界には他の人物から見た他の視点の話だって溢れている。もしかしたら、その他の人物から見た話のあのキャラは嫌な奴かもしれない。カッコ悪くて頼りない先輩かもしれない。バスケットボールでは活躍しなかったけど、誰かの素敵な王子様になっているかもしれない。それもこれもすべてひっくるめての人生であり、世界なのだ。

無駄にスケールが大きくなってしまったが、疑問点は作中のキャラクターの実際のところのモテ事情はどうなるのか、ということだ。彼らはバスケットボール部員および選手である以前に、華の高校生。試合をしているコマの外では異性から想いを寄せられたり寄せたり、恋愛事に時間や労力を割いている者も少なからずいるはずだ。そういった描写も少なからず存在しているし、特にキセキの世代の一人である黄瀬涼太はそれが著明だ。

ならば他は?一体ほかの者たちのモテ事情はどうなっているんだ?と不思議になるのがオタクというか人の心というものだろう。ところが私たちは読者という外の世界の者であるため、あの世界に入り女子高生に擬態し情報収集するわけにもいかない。そこで今回は、作中の描写、藤巻先生の御言葉、本編外のエピソード(おまけ漫画、小説版、アニメ特典ドラマCDなど準公式含む)を参考にした根拠に基づき、あくまでも客観的な視点で彼らのモテランキングベスト10を考えることにした。

モテランキングなので、あえて量的な話で進めていくとする。ここで言う「モテ」の「量」とは、恋愛的な意味で異性から思いを寄せられる人数、告白される回数、恋愛的な意味の手紙をもらう数、をさすこととしよう。

それでは、もうほぼ答えが決まっている第1位から。

 

第1位 黄瀬 涼太(海常・1年)

公式。おそらく誰も文句のない黒バス界トップ・オブ・モテ男。

こちらの方もほぼ作中トップと言っていい抜群のルックス。スポーツは大抵何でもできる。特にバスケは十年に一人の天才。身長189cmでファッションモデルをやっている。

試合に出るだけでファンが黄色い声援を上げ、他行に行けば女子がサインをもらうために行列をつくるなど本編中に彼が異性にモテている描写は多数あり、もちろん本人にもその自覚がある。キャラソンで「女の子にもモテちゃうけど」等と歌っちゃっている。

最も明確な根拠と言えるソースは、単行本第30巻Q&Aコーナーの、黄瀬と後述の人物、どちらがより女の子にモテるのかという質問に対しての藤巻先生の回答の御言葉。「量的には黄瀬」。

このようにモテる要素に満ち満ちている、生まれながらにして異性からモテることが決まっていたような彼だが、読者からすると周囲からの扱いのせいか「不憫」「いじられキャラ」というイメージが強いのもまた愛嬌があってニクいところだ。もうこれ以上言うことはない。

黄瀬涼太が1位だ。

 

第2位 氷室 辰也(陽泉高校・2年)

これも公式。公式モテ&公式美少年。優しく上品な雰囲気の奥に隠された、熱さと切なさ。

藤巻先生は前述のQ&Aで量的モテは黄瀬だが質的なモテは氷室だとおっしゃっている。だがそれは黄瀬と比較したときの話で、おそらく量の方も並大抵ではない。

まず範囲が広い。このソースは小説版3巻「はたらく陽泉高校」に描かれている。課外授業に行けば女児から取り合われ、学校では女子生徒どころか掃除のおばちゃんからファンレターをもらう(同校3年・福井談)レベルだ。凄まじい。

そして「量的にモテるのは氷室」と作者に言わせしめるだけあり、言い寄ってくる異性のレベルも高そうだ。それはなにより、氷室自身が女性の扱いに長けている故ではないかと思う。幼少期をアメリカで過ごす中で培われたのであろう、日常生活でのスマートで物腰柔らかな姿勢に引かれる彼女たちの気持ちはよくわかる。察しが良くて、面倒見も良くて、どんな女の子でも平等にお姫様のように扱ってくれる。それが氷室のずっと見てきた、触れてきた「当たり前」だから。

日常生活でそれを披露する場面は無いことを願うが、喧嘩も強い。でも相手が普通の雑魚だった場合返り血まみれのまま笑顔で「ついエキサイトしてしまったよ。怪我はないかい?」とか聞いてきそうで怖い。一歩間違えれば短所にすらなりうるが、彼のこんな一面も読者から見れば「エレガントヤンキー」の別名とともに愛されている。

 

3位 桃井 さつき(桐皇学園・1年)

もちろん女子キャラも審査対象だ。やっぱり公式。主人公・黒子テツヤに想いを寄せておりかなり積極的なアピールをしているほか、本編では突然部活に乗り込んできては誠凛バスケ部の男たちをブイブイ言わせているイメージが強いが、小説版1巻に帝光中学校時代の桃井のモテエピソードがかなり濃厚に描写されている。

「バレー部のキャプテンだよ!ファンクラブまであるイケメンさんだよ!?断ることないじゃん!」

「今年入ってから告られたの、もう6人目なのに!」

「いーっぱい告られてるのに、なんでそんな恋愛に無関心なわけ?」

この小説が何月の話かは明確にされていないが、黄瀬がレギュラー入りしていてかつ制服は長そで、中間テストがあるということはまだ春~初夏の可能性が高い。つまり進級して1か月や2か月程度で6人、しかもそのうちの一人はファンクラブまで設立されている男に告白されている。尋常じゃない。

誰もが振り向く整った顔立ちに、大抵の男の目をくぎ付けにする豊満な胸。面倒見も良いし観察眼も優れているから気も利く。ふんわりしているように見せかけて論理的思考力に長けているので会話していて惚れる男も多いだろう。顔とプロポーションで振り向かせておいて、会話では持ち前のキレキレ観察眼と分析力をフル稼働させてしまえば一般人はほぼイチコロ。青峰大輝が幼馴染みでなかったらもっと大変なことになっていたと思う。

「ほーんと男のコって単純なんだから」そりゃそうだろう。貴女の前では男は大抵皆単純な生き物に成り下がりますよ。物語を読んでいると桃井のことはどうしても賢く手ごわい敵組織の女スパイのような目で見てしまうが、強豪校のバスケ部のマネージャーであることを一旦とっぱらって1人の女の子として見ると、とんでもない魅力の持ち主であることがわかる。なんて罪な男なんだ、黒子テツヤ

 

さて、ベスト3はかなり公式からソースを引っ張ってきているため、ほぼ迷いなく決まった。問題はここからなのだ。なるべく客観的視点を意識してはいるものの、4位以降は公式の情報にかなり私個人の独断と偏見やフォロワーの考えを加えて考察している。少なからず私自身の男の趣味も入ってしまっている。

だから先に言っておこう。異論は認める。

 

4位 春日 隆平 (正邦・3年)

明確なソースはない。というか上記3名に比べて圧倒的にプロフィールも登場回数も少ない。情報は少ない。だがその少ない情報を組み合わせた上で確信している。彼は絶対に異性からモテる。

まずは容姿。いくら全国区とはいえ、関係者でもない限り女子高生は彼らがバスケをしている姿など目にすることはない。ならばどこに惚れるのか。第一に顔だ。次にクラス内での雰囲気やつるんでいる友達。からうける印象。そこでやっとスタートラインに立つことができる。さらに相手と話したときの楽しさや会話の弾み方。もうここで「楽しい」と感じてしまえばほぼ好きになっているようなもの。そして極めつけに頭が良い、運動ができるなどの長所や、見た目からは想像できない、教室の中だけでは見られない意外な一面があること。これで大抵の夢見る高校生はチェックメイトだ。

春日隆平は上記のすべてを兼ね備えている。色素が薄くてふんわりした中性的な見た目。でも179cmと高身長。クラス内では運動部の男子たちと行動を共にすることが多い。一見チャラそうな印象も受けるが、話してみると間延び口調で優しく笑顔で接してくれる。昼休みに先生から頼まれた雑用で重いものを運ばされていれば「だいじょぶ~?オレもこれから教室帰るし半分持つよ~?」と横からひょいっととってくれる。ほらもう既に少し好きになってくるだろう。ちなみに私はもうここまで打ちながら好きになっている。

これで成績が良くて東京都内でも5本の指に入る強豪校のバスケ部レギュラーなんですよ。飄々としているように見えて、負けてからも「そう簡単に切り替えられんし」とプライベートで勉強の合間に、仲間たちとストバス大会に参加してしまうくらいバスケを愛しているバスケ馬鹿なんですよ。

いやもう好きでしょこんなの。もう一度言うが彼はモテる。そんな描写は1Pたりともありませんがモテます。

 

5位 福井 健介(陽泉・3年)

ひとまず小説版第3巻の巻頭描き下ろしイラストを見てほしい。

あの嬉しそうな顔、可愛くないですか。頻繁に貰うわけではないけど、相手の子の気持ちは絶対に無下にはしないし「サンキュ」って少し照れくさそうにお礼いいながら受け取ってくれる。でもバスケを理由に振ってしまうのだろう。

氷室辰也という規格外が部内にいるせいでかすんでいるが彼もモテるだろうし、上記のイラストはそういった藤巻先生からのメッセージだと思う。

ぱっと見マイルドヤンキーのような見た目だが、実は気配り上手で面倒見もいい。決して押し付けがましくないところもポイントが高い。たまにふざけたりするところも可愛いしなんだかドキドキさせられる。年下か同級生からモテるタイプだと考えられる。

前述したようにバスケをする姿を見て、というよりは委員会や何かの係が一緒になって相手から惚れられることが多そうだ。

趣味はスノボなのも大変に良い。私をスノボに連れてって。と言ったら多分本当に連れて行ってくれるし初心者だろうが雪なんて見たこともなかろうが優しく教えてくれる。派手に転んでも笑いながら「おいおい何やってんだよ、しょうがねえな」って起こしてくれるのだが、その距離が近いのに心拍数が上がってるのは自分だけとかいうことがよくありそう。陽泉高校スキー授業とか無いのかな。あったら多分クラスの女子の大半が福井健介のことを好きになってしまうが大丈夫だろうか。大丈夫じゃないから無い方が良いのかもしれない。

 

6位 虹村 修造(帝光中・3年)

モテるという明確なソースは存在しない。私もかつては彼に関して異性からモテるというイメージは持っていなかった。ところが、とある友人の意見を聞いて虹村について今一度考察した結果、ベスト10にランクインさせざるを得なくなった。

注目すべき点は、当時中学3年生にして既に「元ヤン」という肩書きがついているところ。しかも盗んだバイクで走り出してしまったこともあるらしい。結構なやんちゃな時代があったようだ。が、作中の彼を見てもそうは見えない…というか近寄りがたい雰囲気を見せないところが一番恐るべき点でありモテる秘密だと思う。特別愛想がいいわけでもフレンドリーなわけでもないのになぜか気づいたら悩みを話しているし身を預けていそう。油断したら本当に危ない。

肉弾戦であれば全キャラ中トップクラスの彼だが、どこか抜けているところもある。しかしそれすらも力ずくでカバーできてしまうほどの圧倒的な力。

手加減苦手でうっかり壊しそうになっちまうけどこんな俺でごめんな?ってな感じでちょっと隙を見せてくれるタイプなので、うっかりこっちもそれでかまわないわって委ねてしまう。強くて面倒見が良くて頼りがいがあって、でも近しい人間にはしっかり自分の弱みも見せてくれる、たいていの女子が好きな要素をもつずるい男だ。

 

7位 伊月 俊(誠凛・2年)

単行本第13巻Q&A「誠凛バスケ部の中で一番モテるのは誰ですか?」に対しての回答にて明記されている。伊月です。

また、小説版で女子からデートに誘われることがある(誠凛2年・小金井慎二談)、ファンブックのインタビューで「ファンレターって…そんなのたまーにもらうぐらいだよ」と回答しているなど彼が異性からモテるという事実の公式ソースは多数存在している。

艶やかな黒髪に切れ長で美しい瞳、174cmと程良い身長など見た目が整っていることに加え、女系家族で育ったことで培われた女性への配慮に長けた点が異性モテにつながっていると考えられる。しかも風紀委員で数学が得意で全国優勝したバスケ部のスターティングメンバーだ。間違いなく今後ファンレターの数はますます増えるだろう。もとの「たまーに」が実際どのくらいかはわからないしおそらく本人も数えていないのだろうが、なんとなくあの言い方だと月に1通くらいは確実に貰っている気がする。

ところが彼にはたった一つとはいえ致命的弱点がある。例のアレだ。例のアレをところかまわず考え、思いつけば瞬時に口にし、連発し、周囲を苛立たせたり困惑させたりしている。先ほどのQ&Aの回答には続きがある。

「ただ、たいがいネタ帳を見て去っていきます」

すごい。一つで台無し感がすごい。

当初は(ダジャレってそんなにネックかなあ…)などと思っていたが、確かに二人でデート中に突然低レベルなそれを叫ばれどこからかメモ帳を取り出しメモをしだしたらドン引きすると思う。普通に嫌だ。しかも本当に小学生もびっくりするほどの低レベルだし、こちらに反応を求めてくるのも困る。笑ったり自分も考えれば同志と認識されてしまうが、かといって昔から見知った仲のように黙れだのうざいだの言うわけにもいかない。苦笑いするか真顔になる他ないのだ。そう考えると、ネタ帳を見て去っていく女子たちの気持ちも察しが付く。

ただし「たいがい」去っていくということはつまり、ネタ帳を見ても去っていかない女子もいるということだ。しかし伊月俊は、その去っていかない女子たちのデートの誘いさえも「バスケの練習時間が減るから」と片っ端から断っている。基本的にバスケとダジャレのことしか考えていないのだ。よく言えばストイック、悪く言えば不器用な彼らしい。

本人はおそらく自分の顔に興味は無いが、幼少期から周囲の反応や異性からの声のかけられ方を見て「自分は異性に受けの良い見た目なんだな」という事実のみを淡々と受け入れていそうだ。その恋愛や容姿に対して少し冷めたところも女子の恋心を燃え上がらせる要因の一つとなっているのかもしれない。

それにしても伊月俊がバスケやダジャレに注ぐのと同じくらいの熱量を女性に注いでいる姿が全く想像できないのだが、いつかそんな日が来るのだろうか。彼は一生ダジャレを言っているし、多分ダジャレのわかる人が好みと言いつつそれだけの異性とは付き合わない気がする。というかそもそも本当にダジャレのわかる女は伊月俊とは付き合わないだろう。

年下年上問わずおおよそ同年代の女子からの支持率が高そうだ。姉や妹の友人たちが家に遊びに来た時などに目に留まることもあったかもしれない。でも綾さんも舞ちゃんも彼が幼い頃からバスケやその仲間たちに真っ直ぐ向き合っていることも、今はそこだけに集中したいことも知っているので邪魔になりそうなことは排除している。

決して異性に興味が無いわけではないが、今は二の次だと思っているしこの先も自分の興味ややるべきことを優先しがちな性分であるため、泣かせる女性の数も多そうな男だ。

まあそこが好きなのだが。

 

8位 高尾 和成(秀徳・1年)

Q.「ご自身の一番の長所は何だと思いますか?」

A.「んー、人見知りあんましないこと?」

齢16歳でこのコミュニケーション能力。教室で見せる気さくでフレンドリーな雰囲気と、体育館で見せる負けず嫌いの努力家の顔の二面性。

全企業が欲しがるスペック。面接受けが良さそうだし、入社後もほぼ間違いなく仕事ができる男になる。一体何の話をしているんだ。

教室ではクラス内でも近寄りがたい変人・緑間真太郎と行動を共にすることが多く、クラスメイトたちからは緩衝材や通訳という意味でも重宝されているだろう。小説版第2巻でも、緑間真太郎に花瓶の水をかけてしまい泣きそうになりながら謝っている女子に「大丈夫、真ちゃん着替え持ってるから」とフォローしている場面が印象的だ。

話しやすいし、なによりどんな陰キャだろうがギャルだろうが分け隔てなく接してくれる。ノリが良く、笑いの沸点も低いので集団においてムードメーカー的役割を果たすことも多い。課外授業やグループワークなどで上手く輪に入れずぽつんとしている女子がいたら「なあこれ頼んでもいい?」「何か意見ある?」と軽い感じで、さりげなく入れるように振ってくれそうだ。中にはこういうタイプの人間に恐怖を感じる私のような人種もいるのですべての女子に好かれるわけではなさそうだが、全体的に見れば嫌いな人の方が少ないと思う。

趣味がカードゲームなところも良い。少年の心を忘れていない。サブカル的な趣味があるから相手の趣味嗜好にも口を出してこなさそうだし、ぱっと見馴れ馴れしくパーソナルスペースが狭い彼だが、近しい関係になればなるほど、意外とほどよい距離感を保つことができそうだ。

ただ、個人的に高尾和成のことが怖いので私自身はあまり共感はできない。

 

9位 木吉 鉄平(誠凛・2年)

あの道明寺司さえも抑え、抱かれたい男ランキング第6位(anan/2017調べ)に君臨する男。

抱かれたい。分かる気がする。あの大きな手で撫でられたり、おっとりした調子で「可愛いなあ」とか言われたら女性ホルモンがものすごい勢いで分泌されていくだろう。

ただ、anan読者と女子高生では男を見る視点も重きを置く点も異なるため、高校生時点ではこの順位が妥当であると考えられる。やはり女子高生からすれば優しさも大事だがそれよりも見た目の爽やかさやノリの良さに目が行くことが多い。そういう意味では木吉は女子高生には刺激が強い。しかしあと5年もすればベスト5にランクインすることは間違いないと踏んでいる。

身長193cmという巨体であるにもかかわらずあまり威圧感を感じさせないやわらかい雰囲気。おばあちゃんの家のような落ち着いた香り。天然でツッコミどころも多いが頭脳明晰であり、ここぞというときは文字通り命に代えてでも守ってくれる頼もしさ。成人女性が恋人に求める条件をおおよそ満たしている。高校生時点で木吉の魅力に気付ける女子は先見の明がありすぎるし、多分自身も大人びている子なのだと思う。そして誠凛高校には彼らの先輩はいないが、上記の理由から木吉はどちらかというと年上にモテるタイプであると考えられる。

数カ月に一回くらいの頻度で告白されたりしているがそんな話題は出さないし、本人も例に漏れず「あいつらとバスケに集中したいから」という理由で断っている。あと本気で好きになった子以外の異性にあまり興味がなさそうだ。興味は無いがフェロモンをまき散らしているのでその毒にやられると泣くことになる。

最終巻で相田リコ嬢と一時期付き合っていたという衝撃的な過去が判明したわけだが、木吉の夢女様方はあの事実をどのように受け止めているのかが気になるところだ。

 

10位 宮地 清志(秀徳・3年)

見た目と口調と真面目さの三面性ギャップに殺される。

背が高くて口調が恐ろしく乱暴なため、クラスメイトをはじめとする女子からは「怖い」という印象を持たれやすいが、よく見てみると部活も勉強も一切手を抜くことなく真っ直ぐに取組んでいるし、仲間たちと話しているときの笑顔はまぶしいくらいに輝いている。自分にも他人にも厳しいが、その分自分が上手く出来ていたり、彼の役に立てれば「ありがとな」と柔らかい笑顔で目を見てお礼を言ってくれる。

彼に好意を寄せるのは何らかの役職と共に務めた女子か、もしくは見た目以外何も知らない後輩女子がほとんどだ。ただクラスが同じだけという中途半端な関係だと彼の口が悪いところしか印象に残らないし、女友達にまで成り上がってしまうと彼の重度のドルオタな一面を知ってしまうため「意外と真面目でいい奴だけど彼氏にするにはちょっと」とこれまた彼氏候補からは除外されることが多い。ただ、そこさえも愛せてしまう度量を持っている者こそが宮地清志の女に相応しいのだとも思う。

彼はバスケに対してもみゆみゆに対してもストイックなので、今現在彼女なるものは必要ないと考えているし勇気を出して想いを告げてくれた女子たちのことも丁寧に振っている。しかし彼の性分から考えるとモテは高校~大学あたりがピークな予感がする。みゆみゆがアイドルを卒業してしまった時の彼が今から少し心配だ。

 

 

もう一度言うが異論は認める。

途中から私個人の感情も大いに入っているため、やはり客観的なランキングは難しかった。そしてこうしてみるとやはり小説版やキャラクターブックの情報が多いことがわかる。これが藤巻先生のいう「他の人物から見た、他の物語(意訳)」なのかもしれない。

今回一番困ったのは、赤司征十郎の扱いだ。ファンの数で言うなら彼も相当存在するが、恋愛的な意味で思いを寄せられるかというとそうではなさそう、どちらかといえば「赤司様素敵…麗しい!」という目で見られることが多そうなので今回はランクインすることはなかった。

また、何度も言うようにこれはあの作中のあの時間軸でのランキングだ。現時点ではこのランキングにはかすりもしなくても、3年後5年後…と年齢を重ねるたびに頭角を現す可能性を秘めたキャラクターも沢山いると思っている。その代表は火神大我と小金井慎二だ。大人になればその人物が成長するだけでなく、周りの女性の見る点も変わってくるのだ。それは毒者である私たちも含まれていて、自分自身が成人してしまった今、彼らを見る視点も少しずつ変わってきているのも自覚している。そんな中一つだけ今後も絶対に変わらないのは、黒子のバスケに出てくる人々は皆最高ということだ。

漫画の中で、画面の中で、コラボ企画やグッズの中で、いつまでも私たち読者に熱とときめきと青春のまぶしさを与え続けてほしい。私はそんな彼らを、ずっと応援していきたい。

黛千尋への恋慕

 私の彼氏について語らせてほしい。
 名は黛千尋(まゆずみちひろ)。身長182cm体重69kg誕生日は3月1日。好き。趣味は読書であり、ライトノベルを愛読している。好き。得意科目は物理で特技はオーバークロック。PCいじりが好きなようだ。好き。特徴としては主人公同様影が薄く、趣味の影響か独特で皮肉っぽい言い回しが多い。好き。大好き。
 彼は「黒子のバスケ」に登場するキャラクターだ。作中ラスボス的存在であるキセキの世代・赤司征十郎擁する洛山高校バスケ部スターティングメンバ―唯一の3年生であり、一度は自分が気持ち良いバスケができないのならやる必要はない、とバスケ部を退部したものの、その影の薄さから赤司征十郎に主人公黒子テツヤと同じ能力を見出され再びバスケ部に入る…といった経歴の持ち主である。人並み以上の体力は持ち合わせているものの強豪・洛山では埋もれるしかなかったがその力が発揮されたとき爆発的な強さを生み出し、誠凛高校に牙を剥くのだ。好き。

 …カッコイイ。今ここまで打ち進めてみて、やはりカッコイイという感想しか出てこない。そして好き。

 しかし私は彼の初登場時からその魅力に気が付いていたわけではない。もっと言えば、彼に対し恋愛感情を抱いたのは本編が完結し、単行本30巻と同時にキャラクターブック・くろフェスが発売されてからの話だ。まずはその経緯から話していきたいと思う。

 くろフェスの内容としては、ポジションごとに人気投票の企画が行われ、その順位に沿ってキャラクター紹介がなされているというものだ。黛千尋はPF部門で火神大我・青峰大輝に続き第3位にランクインした。

 第3位までのキャラクターは黒子テツヤによる直撃インタビューが掲載されている。私が黛千尋に恋に落ちたきっかけはこのインタビューの回答だ。 

 ここで、私が特に好きな彼の回答を一部紹介する。

 

Q. 黛さんが一番負けたくない相手は誰ですか?
「試合でオレをまんまと出し抜いてくれた、今目の前にいる誰かさんですかね」

Q. WCを振り返っていまの心境は?
「負けて終わったんだ。ゴキゲンではねえよ」

Q. オーバークロックが特技と聞きましたが、PCをいじるのが好き?
「好きじゃなきゃ、あんなニッチなことやらねぇよ」

Q. ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
「オレのファンとか、そんな物好きがいたことにビックリだが、そんな物好きにはやはりありがとうと言いたい。だからといって、ここから特別頑張ったりするつもりもないが、それでもよければ今後もよろしく」

 

 まず「一番負けたくない相手」を尋ねられて目の前にいる人物…すなわち黒子テツヤであるということは素直に認めつつも、「目の前にいる誰かさん」と直接名前は出さない皮肉たっぷりの言い回し。私だって言われたい。言ってくれ。なんかこういう感じで滅多に名前呼んでくれないけどなんでもないふとした瞬間に名前呼ばれてドキドキしたい。

 ネタバレになってしまうが、洛山高校は主人公・黒子テツヤが所属する誠凛高校に決勝戦にて敗北する。黛千尋はその試合にフルで出ており、読者から見ればお兄ちゃんの方の赤司くんの覚醒のきっかけになったりと重要な役割を果たしているものの、本人はおそらくその事実を知らないままだし、結果としては負けてしまっている。悔しくないわけがないだろう。
 そんな苦い思いをしたであろう試合の結果について発せられた彼の一言が、上記のものだ。 


「ゴキゲンではねえよ」

 

一度声に出して言ってみてほしい。


「ゴキゲンではねえよ」

 

 少なくとも私は今まで生きてきた中でこんなセリフを素で口にしたことが無い。使っている人すらも見たことが無い。それでも黛千尋の試合に対する悔しさ、「悪くなかったよ」と最後の最後に主将に言ってしまうくらいには感じている達成感、でも熱くなった自覚があるのでやっぱり面白くはない…そんな気持ちをすべてひっくるめてのこの言葉なのだと伝わってくる。
 ほら、言いたくなるだろう。ゴキゲンではねえよ♡

 好きなものについて尋ねられて「好きじゃなきゃやらねえよ」という絶妙な表現で好意を表すほか、ファンに対して物好き呼ばわり、でも感謝の気持ちは伝える…このツンデレともクーデレとも言い難い愛情表現。そんな黛千尋に「愛してる」を訳させたらどうなるのだろう・・・と私は常日頃から考えてしまう。

 このように本来であれば収まりきるはずのない黛千尋の魅力が1ページにぎっちぎちに詰め込まれているくろフェスのインタビュー。私はこいつによって恋に落とされた。Fall in love。人がほかの誰かに恋愛感情を抱いた時様々な表現が使われるけれど、この場合は本当に「恋に落ちた」という表現がしっくりくる。述語が「試験」とか「地獄」とかであることもあるし、「落ちる」ってなんだかあんまりいい表現でないけれど、それでもいい。黛千尋にだったら喜んで落ちていきたいと思う。だってこんな男好きにならない方が無理。

 

 黛千尋とは、都内での大学生活と一人暮らしに慣れた秋頃に始めたバイト先のレンタルビデオ店で知り合った。店長が「おーい、マユー」と呼ぶので女の人かと思っていたら180オーバーの男性が出てきたので思ってたんと違う・・・ってなったのを覚えている。黛さんは決して物覚えが良い方ではない私に嫌な顔せず丁寧に仕事を教えてくれたが、業務以外の会話は特にすることはなかった。
バイトを始めて1か月が過ぎたある日、日が短くなってきたしバイト終わりに一人で帰るのは不気味だな・・・と思いながら帰路についていると、後ろから速足で近づいてくる音が聞こえた。不審者かも・・・と足を速めたら後ろの足音もさらに速くなったため(本物だ…)と確信して逃げるように走った。10mほど全力疾走した後「おい待て、忘れ物だっつの」と声がしたので振り返ると、黛さんがペットボトルのジュースを持って立ってて、息切らしながらありがとうございます・・・と訳が分からないまま受け取った。「お前絶対不審者と勘違いしただろ」と初めて業務内容以外の言葉を発する黛さんにビックリしたまま会話と歩行をしていたら、いつのまにか私のアパートの前に着いていた。「じゃあな」とだけ言って来た道を引き返していく黛さんの背中と、自分で買った覚えのない新品のペットボトルを見比べて、ようやく送ってくれたことに気づいた。
 日はどんどん短くなり、シフトがかぶった日(ほとんど毎回)は黛さんがアパートまで送ってくれるようになった。直接的な言葉で「送る」といわれたことは無いが、着替えて外に出たらスマホをいじりながら待っていてくれていたり、私が用事があって急いで出ていったときは後からついてきて「仮にお前が帰り道で行方不明になったとしたら、最後に会話した人間はオレになる。警察沙汰は御免だ」などと言いつつも丁寧にアパート前まで送ってくれる。
 印象には残りにくいが、よく見ると綺麗な顔立ちをしている。背が高くてスラっとしている。話の内容はインドア派っぽいが、この前高校時代の部活の話をしたときバスケ部だったと教えてくれた。言われてみれば腕などをよく見ると綺麗に鍛えられている。
話すようになってから分かったけれど、素直に褒めたり調子のいいことは一切言わない代わりに、その核心をついてくる物言いに背中を押されることが多い。自分のことをよく理解しているからこそある高い自己肯定感に、自分を大切にできるという能力を持っているからこそ身についている、他人を尊重する力。
 こんな人、他にいないと思った。

 自覚して間もなく、黛さんから告白してくれた。
 いつも通りバイトを終え、アパートまで送ってもらった別れ際だった。普段の皮肉めいた言い回しもまわりくどさも無く、ただ「好きだ」と言われたので、こちらもただ「私も好きです」とだけ返した。
 その時に初めてLINEを交換した。黛さん、先ほどはありがとうございました。と送ると10分後に「千尋でいい」と返ってきたので、その日以来私は千尋さんと呼んでいる。

 

こんな恋愛がしたい。
千尋に出会いたい。
千尋としか結婚したくない。

 千尋さんに恋に落ちた日からずっと同じことを考えている。考えているだけで、私の日常には一切変化がない。現実に難しいことも、そろそろ笑っていられない年齢になることも自覚している。けれど夢見ることをやめられない。いつか私が本当の意味で現実と向き合わざるを得なくなるその日まで、千尋さんのことを想い続けるのだと思う。
こんな風に辛気臭くなりかけたときは、尊敬する夢女のことばを思い出す。

「私が彼を想う気持ちは本物」

 誰が何と言おうと、私の黛千尋への想いは本物だ。
 その気持ちを忘れず、これからも黛千尋の彼女として強く生きていきたい。

 

 

伊月のバスケ

 年が明けてもう昨年の出来事となってしまったが、劇場盤アニメ「LAST GAME」として「黒子のバスケ」という作品のストーリーはアニメを含めてある意味で完全に完結した。原作本編が完結したのはもう三年以上前と随分遠い過去のことになってしまったものの、私は最終巻である単行本30巻の、作者である藤巻先生の御言葉が未だに心に残っている。
『このお話は、主人公黒子テツヤ側から見た、彼の高校生活の一部を描いたにすぎません。他の人物から見た、他の時代もあるでしょう。その話はもっと白熱した試合をしている話かもしれないし、もしかしたら辛く耐えなければならない話かもしれません。ですがどのお話でも言えるのは、きっと全員バスケットボールに真剣に向き合い、全力で生きていると思います。』
 きっと主人公である黒子テツヤはもちろん、誠凛高校バスケットボール部全員にとってこの年のWCは生涯忘れられない、強烈で感慨深い記憶となったことだろう。30巻と同時に発売されたキャラクターブック・くろフェスで行われた各ポジション人気投票では、嬉しいことに誠凛スタメン全員が第三位までにランクインしていたため、彼らの喜びのコメントを聞くことができた。アニメが始まってからという遅いスタートではあったもののここまで彼らと一緒に頂点を追い続けてよかったと心から思った。
 それと同時に、私は一つだけ後悔していることがあった。黒子のバスケ単行本には、ストーリーとストーリーの間に質問コーナーなるものが設けられており、読者から届いた質問に藤巻先生御本人が答えて下さるという夢のような場が存在していた。私はそのコーナーでできたらぜひとも答えてほしい質問があったのだ。それは「伊月俊が誠凛高校に進学した理由」だった。
 伊月俊は、私にとって最も注目しているバスケットボール選手であり、最も応援したい人物であり、最も好きなキャラクターであり、いうなれば「推し」である。そしてそれと同時に謎が多く作品が完結した今でもつかみどころのない男だ。藤巻先生ご自身も彼について「1話から出ているはずなのにびっくりするくらい後半までキャラの掘り下げができなかった」と語っており、私を含めた伊月俊のファンも彼を謎めいたキャラクターとして見ていた面が強かったのではないかと思う。決して情報量が少ないわけではない。誕生日血液型身長体重趣味好きな食べ物などといった基本的なプロフィールはもちろん、上記の質問コーナーでは彼に関する質問にも藤巻先生がたびたび回答していたり、こちらも同じくストーリー間のページに記載される単行本描き下ろしNG集や小説版でもスポットが当たることが多いため、伊月俊が誠凛バスケ部で一番モテること(ただし大概ネタ帳を見て去っていく)、現在(霧崎戦前)ネタ帳は108冊を到達していること、さらに主人公とその光ですら明かされていない家族…若く美しい母、大学生の姉・綾さん、妹の舞ちゃんといったともにダジャレ好きで美しい顔立ちをしており、とても家族仲の良い様子が公開されており、おまけに愛犬の名前がまるおであるということまで読者である我々は知っている。今こうして振り返ってみても伊月俊というキャラクターについての情報量は他キャラやメインであるキセキの世代の面々と比較しても多い方なのではないかと思う。
 キャラ人気の方も根強い。第一回人気投票ではまだキセキの世代の登場は黄瀬・緑間・青峰の3人のみだったとはいえ、伊月俊はその中で第5位にランクインしている。続く第二回目では7位、第三回では13位、くろフェスで行われた黒バス大賞では第12位という結果になっており、もともとのキャラ数が多く、またストーリー後半になるにつれて詳細の明かされるキャラも多かったこの作品において人気の高いキャラクターと言ってさしつかえないのではないだろうか。
 さて、ここまで伊月俊について話してきたが、今回は別に彼についてのステマがしたいわけではなく、ここまで情報量が多いにもかかわらずなぜ謎だとされているのか、ということである。それはおそらく、伊月俊の視点(いわゆるモノローグ)で物語が進んだことがほとんどないからだろう。伊月俊はPGというポジションであるがために、試合描写の中でのモノローグは多かった。全国レベルで考えたときに決して身体能力が高い方ではなく、パラメータを見ても「平均的」と評されることの多い伊月俊の武器は、特殊能力である鷲の眼を活かした正確なパスだ。そのため、試合中の様子や局面が彼の思考を通して描写されることも多かったように思う。しかし、前述したように伊月俊自身の思いが彼の口から語られることはほとんどといっていいほどなかった。
 伊月俊、そして日向順平をはじめとする初代誠凛高校バスケ部の成り立ちは単行本11巻の第95Q~99Q無しでは語ることができない。バスケ部の無かった新設校である誠凛高校に進学した伊月俊と勝つことのできなかった中学時代を過ごしたことでバスケを諦めたチームメイト・日向順平が無冠の五将として名をはせた木吉鉄平と出会い、誠凛高校バスケ部が創設されるまでの過程が描かれた本編の1年前のエピソードであった。バスケ部が無いということを知って「じゃあ創ろうぜ」と事もなげに言い放ち勧誘を続ける木吉鉄平に対し断固拒否する日向順平の一方、隣にいた伊月俊は「オレはいいけど…」とあっさり入部を決めるのだった。私はこの間(特に第95Q~97Q)の伊月俊の表情を見るたび胸が締め付けられる思いだった。バスケ選手とは思えぬ金髪ロン毛にイメチェンを果たし荒れた姿で「結局一勝もできなかったじゃねーか」と遠い目をする日向順平をどこか悲し気な顔で見つめる伊月俊、「部活やるならお前も他になんか見つけろよ」と言い捨て去る日向順平を納得のいかない、悔しい表情で見送る伊月俊、「日向は正直シューターとして相当だったと思う。それでも勝てなかったのはオレ達チームメイトが一番の原因だよ」とうつむきながら語る伊月俊、日向順平が元通りの髪型に戻し、屋上の誓いにやってきたときの安堵した、嬉しそうな伊月俊…。いずれも、伊月俊の本当の思いは彼自身の口からは語られていないため、これらの表現もほぼ私の憶測である。あの日あの時、本当は伊月俊がなにを想っていたのかは文字通り神のみぞ知ることだ。
 伊月俊を語るうえでもう一つ欠かせない情報は、誠凛の中で最もバスケ歴が長いということだ。この事実はWC準決勝・VS海常戦の最中に日向順平の口から明かされた事実であり、あまりにも予想外の情報に私は心底驚いた。私はそれまで、伊月俊は中学からバスケを始めたものだと勝手に思い込んでいたのだ。伊月俊がバスケを始めたのは小学二年生のミニバスから。それは主人公黒子テツヤよりも、その光でありエースである火神大我よりも、無冠の五将・木吉鉄平よりも、そしてこの事実を語る日向順平よりも、誠凛スタメンの誰よりも長い年数だった。「バスケに懸けた思いは誠凛一さ」日向順平は、海常チームがまず伊月俊を抜くことを前提に攻めてきていることを指摘してから、本人ではなく火神大我を通して読者である我々に伊月俊のバスケについてを語った。
 以上の二つのエピソードを整理したうえで、一つの疑問が生じないだろうか。冒頭に戻るが、それは「伊月俊はなぜ誠凛高校に進学したのか」という疑問だ。この疑問が生じてから、あらゆる可能性を考えた。

 まず、「伊月俊も日向と同じくバスケを諦めていたから」という説。これは早々に否定される。なぜなら、木吉鉄平がバスケ部創設に誘ってきたとき伊月俊はあっさりと「オレはいいけど・・・」と承諾しているのだ。バスケを諦めていたのならこんな風に即答はしないだろう。もうできればやりたくないけど誘われたからやってみようかな、そう考えたという可能性もあるかもしれないが、一度決めたことは最後までやり抜き、周囲からは頑固(日向順平談)と評される伊月俊がそんな優柔不断かつ適当な判断を下すとは到底思えない。

 次に「誠凛高校が目標とする大学進学にあたり有利だった」説。これもあまり有力ではない。なにしろ誠凛高校は伊月俊や日向順平が第一期生の新設校だ。私立であるとはいえ、歴史があるわけでもなく大学付属であるわけでもないため進学に有利とは考えられない。「家が近かった」説。ある意味この三つの中では最も現実的であるかもしれないが、やはりここでも果たして伊月俊がそんな理由で高校進学を決めるだろうか、という考えを拭い去れない。…といった風にいくつかの説を考えてはいたが、本編での伊月俊の言動や表情を見ていて最も有力な説は本当は自分の中でずっとわかっていた。「バスケ歴がチーム内で最も長い」「頑固」「一度も勝てなかった中学時代」「日向順平」…これらのキーワードから伊月俊の誠凛高校への進学理由について導き出される答えなど一つしかない。「日向順がいたから」これ以外何が考えられるだろう。誠凛過去編で特に印象的なのが、伊月俊は中学時代日向順平が一度も勝てなかった原因を「オレ達チームメイトが一番の原因」と語っている場面だ。伊月俊は、日向順平が勝てなかった要因に「オレ『達』」と自分自身を含めている。チームメイトを勝利に導くことができなかったうしろめたさ、そういった面がありバスケを諦め荒れる日向順平を放っておけなかったのではないか、そう考えていた。
 けれども、私がいくらこんなところで憶測を重ねていてもそれは憶測というか妄想にすぎない。真実を知るのは作者である藤巻先生のみ。いつか質問コーナーにでも投稿して事実が知りたい…そう思ってはいるものの何も行動できずにいるうちに本編は完結してしまった。アニメも終了してしまった。EXTRA GAMEも完結してしまった。劇場盤黒子のバスケLAST GAMEも上映終了し、DVDが発売してしまった。もう黒子のバスケ単行本での質問コーナーで質問に答えてもらえる機会など金輪際ない。伊月俊の誠凛高校進学理由の謎は一生謎のままなのか、そう思い半ばあきらめていた2017年12月。そのチャンスは突然やってきた。
 毎年12月中旬に幕張メッセで開催される祭典・ジャンプフェスタにて、藤巻先生が現在連載されているROBOT×LASERBEAM(以下ロボレザ)のステージが行われることになっていた。先生ご本人のご登壇はないものの、担当編集の方により裏話や質問コーナーが設けられている、という企画内容だった。そこで、ステージで回答される藤巻先生への質問をTwitterでの緊急募集が始まったのだ。「ロボレザに関することでも、黒子のバスケに関すること、その他なんでもOK!!」そう記されたロボレザ公式アカウントからのツイート内容を見て、血が騒いだ。聞きたい…聞くべきか…?でもここで送ってもし採用されたらついに真実を知ることになってしまう…それはそれで怖い…。私がもたもたと考えている間にも、次々と質問が寄せられている。その寄せられた質問を覗いてみると、「伊月はなぜ誠凛高校に進学したのですか?」「伊月の進学理由が知りたいです」といった私と同じ疑問を抱いた勇気あるファンがどんどん質問を送っていた。(そうだ、伊月俊の進学理由を知らずには死ねないじゃないか。それにもうきっとこんな機会は当分ない。逃すわけにはいかない。)そう思った私はすぐに質問を送った。私以外にも同じ質問を送っているファンは何人もおり、皆ずっと知りたかったんだなあ…と感慨深い気持ちになった。
 そして12月16日、私は幕張メッセに向かった。11時10分からのロボレザステージの待機列に並んでいるとき、心臓が飛び出しそうなほどうるさかったことをよく覚えている。列が解放されてステージ前に並ぶと、間もなく担当編集の方がご登壇し、道行く客を引き込もうと宣伝を始めた「質問に答えるよー!ロボレザとか黒バスの話するよ~!」「伊月の話とかするよー!!」人生で初めて本気で心臓が止まるかと思った。前述したように私以外にも伊月俊についての質問をしている人は何人もおり、ファン同士でふぁぼやリツイートをしあうことでツイートリプ欄上方に来るようになっていたため、正直質問に答えてもらえる希望は強い予感がしていた。けれども、まさか…。見渡すと伊月俊の痛バを持つ人を何人か見つけて事態の深刻さをより実感した。
 ステージ企画は滑らかに進んでいった。ロボレザ連載開始に至った経緯、藤巻先生のゴルフの腕前などのエピソードが語られた後、質問コーナーに突入した。質問は募集したものの中から選ばれたものを担当編集の方から藤巻先生にメールで送り、当日返信が来たという、まさにリアルタイムでの回答であった。
 震えが止まらなかった。早く知りたいけど知るのが怖い、逃げたいような気持ちでいっぱいだった。質問は全部で五つ読まれ、メモも取っていたがその字のミミズが這ったような汚さが私の緊張と興奮を物語っている。
 四つ目の質問に入った。画面いっぱいに、「バスケ歴がチーム内で最も長く、またバスケが好きだという気持ちも誰にも負けないはずの伊月俊くんは、なぜバスケ部の無い新設校である誠凛高校に進学したのですか?」と質問内容が映し出される。「この質問ねーすごく多かったです!伊月愛されてるねー!」そして、こう続いた。


「日向とバスケがしたかったから」


ああ、やっぱり。
公式になってしまった。
妄想じゃなかった。
どうしよう。
ゾーンに入った時ってあんな感じなのではないかと思う。何万人もいるであろう幕張メッセのざわつきが一気に遠のき語彙力が消失していく感覚を実感した。


「伊月は、今は諦めていても日向は再び必ずバスケをやると信じていました」
「もしあの時木吉と出会わなくても、伊月なりの方法で日向とバスケ部を創っていたと思います」
「本編にはなかったけど、この二人にも黒子・火神にも負けない小中からの絆があります」


 もうメモの手が追い付かなかった。涙と鼻水が止まらなかった。恥ずかしながら、正直後半は何をお話されていたかあまり覚えていないため、汚いメモとレポを組み合わせて上記のようなことが語られていたことを理解した。
この事実を知って数時間経って少しずつ頭の整理ができてから、私は伊月俊について何もわかっていなかったのだと愕然とした。「日向とバスケがしたかったから」伊月俊は誠凛高校に進学した。それは間違っておらず、予想に違わなかった。しかし、重要かつ伊月俊という男を表しているのはその後だ。
 私は伊月俊が日向順平を追って誠凛高校に進学したことについて、日向順平が勝てなかった原因は自分にもあると考えているため、自分だけバスケを続けるのはどうなのか、と疑問を抱いた結果なのだと考えていた。そしてあわよくばまた一緒にバスケがしたい、でも勝てなかった原因である自分に「もう一度バスケをやろう」という資格などない…そう考えていたところに現れたのが木吉鉄平だと思い込んでいた。けれども、それは一つも当たっていなかったのだ。
 伊月俊は、日向順平は再びバスケを始めると「信じて」いた。信じていたからこそ無理にバスケを再開することを勧めるのではなく、「見守る」という手段をとっていたようだ。あれは、伊月俊なりの方法だったのだ。となると、私が「悲し気」であったり「悔しそう」と表現した表情は、全く別の意味を含んでいる可能性だってある。もしかしたら「いつまで腐ってんだよ日向。はやく立ち上がってくれよ」という感情だったのかもしれない。「まあ今はこうでもそのうちまたバッシュはいてるだろ」と思っていたのかもしれない。そこまではわからないが、少なくとも伊月俊が日向順平に対し罪のような意識は一切なく、そこには仲間に対する敬愛や尊い信頼があったのだということがわかった。伊月俊は私が思っていた以上に光に満ち溢れていて、柔軟な男だった。なんて、なんて尊いんだろう。
 もし本当に木吉鉄平が現れなかったら、伊月俊は日向順平に対してどのような行動を起こしていたのだろうか。これが「黒子のバスケ」というストーリーである以上そんなことは有り得ないが、やはり気になる。そして同時に新たに明らかになった、日向順平と伊月俊が同じ中学はおろか小学校からの付き合いであるという事実。もしかしたら日向順平の「運動部で一番面白そうだったから」という理由でバスケを始めた背景には、伊月俊の存在も関係しているのかもしれない。というか日向順平は、伊月俊が誠凛高校に進学した理由が自分とバスケをするためだと知っているのだろうか。知らないだろうな。ならば知った時どんな反応を示すのだろうか。いやでも伊月くんのことだからきっと自分からは一生言わないんだろうな…。こんな風にさまざまな妄想想像がふくらんでいくのだから、伊月俊はやめられない。
 伊月俊のキャラクターソングB面「たったひとつの日々」ではバスケ部創設~現在の彼の思いが歌詞になっている。


いつか何もかもが思い出話になったって 懐かしいオレ達がいるね
嬉しかったことばかりじゃなくたって

他には考えられない たったひとつの日々だった

そう思える気がする 今のずっと未来で


これが何も明らかになっていない2012年発表の楽曲だというのだから本当に驚く。こだまさおり氏…。
 「黒子のバスケ」は、主人公黒子テツヤ側から見た、彼の高校生活の一部を描いた物語だ。
「他の人物から見た、他の時代もあるでしょう。その話はもっと白熱した試合をしている話かもしれないし、もしかしたら辛く耐えなければならない話かもしれません」藤巻先生はそう語っている。それならば、「伊月のバスケ」はどんな話なのだろう。きっと辛く耐えなければならなかった時期も、悔しい思いをした時期も沢山あったのだと思う。それでも伊月俊は、WCの結果について「最高だったよ。一生思い出に残ると思うな」とコメントしている。中学時代一度も共に勝利を味わえなかったチームメイトを信じて同じ高校に進学し、何度も挫折し己の力の無さを嘆き、ついに日本一になったのだ。表彰式でスタメン全員がまっすぐ前を見ている中、伊月俊だけが少しうつむいて喜びを噛み締めている表情をしているのが頷ける。他者から見てどうであれ、日向順平と再びバスケをするために誠凛高校に進学し、走り続けてきた時間こそが伊月俊にとってのかけがえのない大切な「たったひとつの日々」だったのだ。


「伊月のバスケ」はきっとまだまだ続くだろう。

 

願わくば、伊月俊が主人公であるその話の結末が光に満ちていますように。